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花物語 悪魔の微笑み
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春の公園、野山に色艶やかに花開く桜花、染井吉野の誘惑を皆さんはご存じと思います。
薄墨色の炎を煙るように咲き誇り、ほんの数日で春の嵐にうち砕かれ潔く散ってしまう桜花の花びらに、悪魔が密かに贈る誘惑の視線を浴びたことが有るのではないでしょうか。

小説家、梶井基次郎の作品に「桜の木の下には死体が埋もれている、桜の花はその死体の血を 吸って一瞬の妖しの美しさを見せている」と云うのを聞いたことが有るかと 思います。
この桜の花の一瞬の妖しの美しさ、これを悪魔の仕業と考えたことは有りませんか?。

桜前線の北上とともに桜花の下、日本各地で繰り広げられる気がふれたような馬鹿騒ぎ、喧噪。
いつもは礼儀正しく凛々しく仕事を進めている、それなりに評価されている人々が、人が変わったように酒を飲み、荒れ狂うように叫び騒ぎ立てているのを見たことが有るでし ょう。

花にはどこか人の心を弄び、狂わせ、虜にしてしまう、妖しの魅力 が有るような気がしてなりません。


オリジナルクリスマスローズ 赤 卑弥呼

私たちが愛してやまないクリスマスローズも悪魔に魅せられた花の一つではないでしょうか?。
イエスキリストが生まれた二千年の昔、貧しい少女がイエスキリストの誕生を祝い花束を捧げたと云われるような清らかな物語とは違う何かを、一輪一輪の花に指を添え愛でるときにそれを感じ ます。
つい二昔前までは誰にも振り向かれず、そして人知れず庭の片隅に咲いていた地味な花色をした花クリスマスローズが、この十年の間 に多くの人の心を虜にしてやまなくなりました。
その毒のような妖しの魅力はこのクリスマスローズ一輪の花のどこにある のでしょうか。

小首を傾げ清楚に咲き、なにも欲しがりもせず、冬の寒風に身をゆだねて楚々として灰色の庭に咲く、このクリスマスローズの花のどこにこれほど人を引きつける魅力があるのでしょうか。

もう十数年も前のことですがある雑誌の記事に、花のコレクションで身を持ち崩す男のお話が載っていたのを 思いだします。
幾分か花好きの人をちゃかして書かれていますが、親類・近所のつきあいの香典を出し惜しみ、また産まれたばかりの自分の幼い赤ん坊のミルク代までも妻から取り上げて、日々の生活費までも花のコレ クションにつぎ込んで身を滅ぼしてしまうというお話です。

花屋の店先にダブルのクリスマスローズが数鉢、花首を傾けてあなたにほほえみかけて きたとき、あなたはその悪魔の使わした一株のクリスマスローズが投げかける毒の一花、その悪魔があなたに差し伸べた密かな微笑みの誘惑に勝てるでしょうか?。
蘭の花一輪にも、一枝の薔薇さえにも心を移さず振り向きもせず通りすげたはずなのに、この妖艶ともいえ るようなクリスマスローズの花が誘い出す悪魔の囁き。
あなたはその悪魔の誘惑とも言えるような密かな囁きに心をとらわれてしまうようなことはないでしょうか。

ゆめゆめ悪魔が使わした花、毒をまき散らすクリスマスローズの花に魅入られないようにとの祈りを込めて。


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