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クリスマスローズガーデンハイブリット育種の楽しみと交配方法の基礎

クリスマスローズガーデンハイブリットの育種の楽しみと交配方法の基礎 画像はアプリコット
育種と交配方法 前書き
田や畑で栽培され市場を通り、商店や園芸店などで販売されている植物の多くは人間が発見・作り出したもので、身近な植物では米・野菜・花卉・果物などがあります。
それらは人間が生きていくのに必要な食料として、より多く収穫できる・病害に強い・冷害に強い・味覚が良いなどと、長年月人間の手によって改良育種され栽培されてきたものです。
米・野菜などと比べて花卉や観賞用樹木などは、人間が生命を維持して行くだけならそれほど必要はないようですが、しかし人々が日常生活を営む上での生活環境・心の潤いや癒しと言う部分では、それらの花卉・樹木は大変多くの貢献をしています。
ほんの10年ほど前までは「園芸」と称されてきた言葉が、いつの間にか「ガーデニング」という言葉に置き換えられ、ごく最近になって家庭の主婦や学校教育のなかで子供達にまで広まってきたように見られていますが、実際には他の国々とは比較にならないほど古くから園芸文化は普及し、日本は世界に冠たる園芸大国として歴史を作ってきました。
遠いところでは謡曲「鉢の木」、そして江戸時代の秀忠・家光将軍の頃、ツバキの新しい品種が江戸在住の大名に広まり、武士階級だけでなく一般庶民へのあまりの流行に、幕府は禁令を出したことにもそれらの園芸文化の片鱗が見られます。
どのような禁令かというと、ツバキは花弁が開きしばらくすると花弁そのものが萼からはずれ落ちてしまうのでツバキを作ったり鑑賞すると「首が落ちる」と、このようにしてまでツバキの流行には心を砕いたようです。どこかで聞いたことがあるかも知れませんが大名や武士にとって、首が落ちると言うことは大名や武士の切腹お家断絶を意味しています。
それほどツバキのブームの影響は大きく武士だけでなく一般庶民に至るまで大きな広がりを見せていました。そして、そのツバキなど園芸を流行らせた張本人が将軍秀忠だったという落ちもあるようです。また今では染井吉野というサクラが全国に広まっていますが、このサクラを作ったのも江戸時代に江戸郊外駒込(現在の豊島区)の染井に住んでいた植木職人・伊藤伊兵衛で、三百年のうちに全国に広まったことをみても、江戸時代からはじまった日本の園芸文化の素晴らしいところではないでしょうか。
幕末に日本に来たイギリス人フォーチュンは日本で見た大名屋敷の庭園・農家の生け垣、桜や梅など花見の文化、アサガオや菊・オモトなど庶民の草花に関しての造詣が深いことを自国イギリスへ伝えています。
落語に出てくる長屋の八さん熊さんたち一般庶民が草花を愛でるような習慣は当時のイギリスには少なく、それは一部の貴族の趣味と言われていたようでフォーチュンはこれらの日本の江戸園芸文化を驚嘆しています。。
それら江戸時代に造られた庭園、偕楽園・栗林公園・後楽園などは、その地域の名所とされて現在でも庶民の憩いの場所を提供しています。
それら園芸文化の遺伝子を大きく伝え持っている皆様達で、自分自身で自分自身だけしか持っていないクリスマスローズを作ってみようではありませんか。
このページには遺伝子操作や細胞融合などという難しい言葉はいっさい出てきません。
また仮定の記事などもありません。最低限必要な知識の部分だけです。
クリスマスローズの好きな方なら一度はチャレンジーしてみたい、やってみたという気持ちに沿って基礎を述べていますので「自分自身の花」を作るためにぜひ挑戦してみてください。
育種の目標(ターゲット)
漠然と花粉を他の花の雌しべに付けて交配しても労多く苗の始末にも困りますので、どのような色の花が、どのようなクリスマスローズの姿が美しいかを、そしてどのようなクリスマスローズという植物が欲しいかを考えて交配を行いますと、希望の花クリスマスローズという植物に出会える確率が大きくなります。

花の色
花株の大小
花の形
花の柄(デザイン)
花の多寡
茎の長短
葉芸
開花時期
病害虫の抵抗性
耐暑性(暑さに強い)
開花の期間
・・・・・その他
クリスマスローズの交配方法と技術(一般的な交配方法)
クリスマスローズ(ヘレボルス・ガーデンハイブリット)はお気に入りの花を探してきて、自分だけしか持っていない花を作り出すことが可能です。
自生地などではミツバチや蝶などの昆虫たちが仲人をして植物に種を結ばせ、一粒一粒の種子が芽を出し数年の時間をかけ様々なバリエーションを持った花を咲かせていますので、自然界ではこれら蝶やミツバチなどの昆虫が行ってきたことを人間の手とあなたのセンスで、あなただけしか持っていない花を作り出しましょう。
何の気なしに交配をして種を採って花を咲かせても労多く無惨な結果になりますので、まず最初に行うことは最終的に咲かせてみたい花を想像して、自分が欲しいと思われる遺伝子(形質)を持っ花株を探すことから始めてください。交配を行って好みの花を作り出す基本的な考えは,中学・高校レベルの「メンデルの遺伝の法則」を参考にすると良いでしょう。
技術的なことは別にして一つ一つの花の色や形・株の姿・蕾の頃の特徴などと、その花の持っている個性を十分に見極め数年後に開く花の姿をイメージします。
決して高価な花から、素晴らしい花だけから美しい花が生まれるとは限りません。
一見何処にでもあるような
一輪の花の中に育種の大きなヒントが隠されていますので、一つ一つの株や花の個性を見極めるようにします。

方法は選んだ二つの株を用意します。
片方を仮にAとして花粉親にします。
次に種親でこれをBとします。

膨らんできているクリスマスローズの蕾 開きかけてきた蕾 開きかけてきた蕾
左側の画像くらいでは交配は不可、中央・右側の花弁が開きかけてきて花粉の出ないうちに雄シベを取り去る。

雄しべと雌シベの性質は、雌シベの方が雄シベよりも先に成熟し、花粉がつきやすいようになっていますので
、種親Bの花が開く前、蕾を開こうとしている花の雄シベ(花粉が出る前)をピンセットで全て取去りますが、このさいに雌シベの柱頭や子房などに傷を付けないよう注意してください。種親Bに茶袋をかけ昆虫のいたずらから種親の花(柱頭)を守り数日間の日にちをおき、雌シベに花粉がつきやすいかを確認します。
雄しべが固まりから弾けてきている       雄しべから花粉がでてきている
雄しべの固まりからはじけて葯から花粉が出ているシベを使いますが花粉の出ていないシベでは受粉しません。

手の指で雌シベをさわりますとべたつきますので柱頭の成熟の度合いがわかります。
数日して晴れた日の10時頃から2時頃に、種親Bの花が開き受粉が可能な時期に花粉親Aからピンセットで花粉の出た雄シベを採り、花粉を種親Bの柱頭になすりつけます。
そのまま茶袋をかけ数日してから再度花粉を同じように柱頭になすり付けます。
二度めの花粉を交配したら再度種親Bの花に茶袋をかけ、どの花とどの花を交配したかをラベルに記録して花首に結びつけ、他の花の花粉が柱頭につかないように袋をかけます。
これまでは単純な作業ですが最も大切なのは種親と花粉親の花の写真(花の正面と側面)を撮り、交配に使った親株や日時・天候などのデータを記録することです。
これらによって種子から育った花が咲いた2〜3年後に、親が異なるとどのように花や植物の性質などが変化してくるかが解るようになり、記録を付けることがが次回の交配にもたいへん役に立ちます。


ラベルに書き込む交配記録の例

2006/03/01-am11:00-晴れ
♀ガーデンハイブリットab・・・・・・
×
♂ガーデンハイブリットcd・・・・・・

交配記録は種親を先に花粉親を後ろに書き込むのが世界共通の約束事です。

受粉がうまくいき3週間位しますと種房が大きくふくらんできますので、一旦茶袋を取り去り日光に当て種子の成熟を待ちます。
1房の中には品種や種類にもよりますが、約5・6粒から15粒くらいの種子が入っています。
種房が十分に膨らんできた4月中旬頃に、改めて茶こし袋のような空気の出入りする袋を種房にかけ熟した種子が飛散しないようにします。
クリスマスローズの種が実りかけてきている
種房が充実したこのころに茶こし袋をかける

茶袋をかける
袋をかけたところ

早ければ3年後、通常の育て方でしたら少なくとも4年後には結果が見られます。
これで交配の実際は終わりですが、種子の十分な生育のためリン肥料を与えながら栽培しますと5月の中旬頃には茶袋の中に小さな種がこぼれてきます。

ハイブリットの種さや
ガーデンハイブリット・ブルーブラックの種房

茶漉し袋をかけられた親株
4月中旬・袋を被せられた親株の状態
遺伝の法則
生物の遺伝形質が親から子へ、子から孫へと伝わっていくことは古代から経験的には知られていて、古代5千年前のメソポタミア地方の遺跡からは、現在の遺伝の考えとその伝わり方に似た絵を書いたプレートが発見されています。
そのプレートは馬のたてがみの絵を使って親から子への遺伝の伝わり方を記していて、古代の人々たちも生物の遺伝の不思議さに大きな関心を持っていたことがうかがえる。
遺伝の法則の発見者として有名なメンデルは現在のチェコスロバキアのブルノーにある修道院の修道士で1865年にこの法則を公表していたが、そのエンドウ豆を使った実験は大きく評価されるが広く一般の人々の評価までには至りませんでした。
晩年のメンデルは業績の評価に失意の連続だったが、親しい友人達には「今に私の時代が来る」と語っていたという失意にまみれたメンデルだったが、彼の業績は1900年になってド・フリース以下3人の若い研究者によって再発見されそれ以後メンデルの評価は急速に高まったと言われます。一般的にメンデルの遺伝法則を日本では中学校の生物の授業、さらに高校の生物の授業で教えていますので理解が早いかと思います。
クリスマスローズの交配育種を行うには少なくともこの中学高校レベルの遺伝法則を十分に理解してから行うと時間的にも経済的にもロスが少なくなるかと思います。
そして一般に流布している情報は確かなものといえるものと不確かなものがありますので、どの情報が正確でどれが不確か、それらの選択の目を養うことと確かな文献と正確な情報を得ることが必要です。
クリスマスローズの種を採取したり蒔いたりした経験が有る方でしたら、次のような経験が有るでしょう。
俵型の種・丸い種・大きな種・小さな種・あるいは黒い種・茶色の種・白い種・ベージュ色した種・赤黒い種、そして同じ品種から採れた種でも少しずつ変化が有ることや種類や品種によっての数の多寡、種にも様々な形質の組み合わせが有ることを。
次ではメンデルが発見した法則をクリスマスローズ(ヘレボルス・helleborus)に当てはめてみましょう。
メンデルは雑種植物の研究で、エンドウという植物の豆に現れた形質を7つ選んでいます。
いくつかの例を挙げると、種子の形の違い、種子の色に違い、茎の長さの違いなどでありますが、これにはエンドウ豆の7つの形質が遺伝的に対立していると考えていて、交雑された次の世代の子に現れた親の表現形質を優性、隠れて消えてしまう形質を劣性と名付けています。
付記しますが、この「優性・劣性」の言葉は植物の優劣の意味ではありません。
これを仮にクリスマスローズの花茎の長さに当てはめてみると次のようになる。
クリスマスローズの花茎の長い株(A 仮に約80センチとする)、短い株(b 仮に約20センチとする)として双方を交配してみて、次の世代に現れてくる株の花茎の長さが全て長い場合には茎の長い株を優性、また短いものだけが現れた場合には短い株の性質を優性と考えます。

この部分では長い茎を優性と仮定している
優性の形質を持つ長い茎 AA
劣性の形質を持つ短い茎 bb
上記の長い茎 AA短い茎 bbを交配して見ると以下の形になります。
b b
A A b A b
A A b A b

長い茎 AA × 短い茎 bb
作られた子長い茎 A b
作られた茎の長い子は双方の両親の株から対立していると考えられる茎の長短の遺伝形質を受けついているが、実際に表現として現れてきたのは茎の長いものでAAが優性の形質だとわかりbbの表現は劣性の形質として隠されてしまったと理解できる
これによって作られた株を(A b)F1と言い、この法則を
優性の法則と言う。
@表現された形は長い茎だが劣性の遺伝情報も併せ持つ長い茎( Ab)の株を自家受粉させて100粒の種子を採取し、全て生育したとすると花茎の長さは若干の相違はあるものの遺伝的な形質が1:2:1(見かけの表現3:1)に分かれてきます。
@ F1 A b
A AA(25%) Ab(25%)
b Ab(25%) bb(25%)
この段階で隠されていた劣性の遺伝子(bb(25%))が株の長さに現れてきて、仮に100粒の種子を採取して全て開花させ茎の長さを確認すると、現れる茎の長い株(AAAb)の数は75本になり茎の短い株は(bb)は25本になる。
これによって作られた株をF2と言い、遺伝的な形質が1:2:1(見かけの表現3:1)に分かれることを分離の法則と言う。
A次に分離させた茎の長いAAAAを交配させてみましょう。
A A A
A AA AA
A AA AA
全ての花茎の長さは長くなります。
B次に分離させた長い茎のAAと短い茎Abを交配して見ましょう
B A b
A AA Ab
A AA Ab
長い茎が全ての株に現れます。
C次に分離させたAbAbの株を交配してみましょう。
C A b
A AA Ab
b Ab bb
茎の長い株(AAAb)は75%、茎の短い株(bb)は25%現れることになります。
D次にAAbbを交配してみましょう。
D b b
A Ab Ab
A Ab Ab
AAbbの組み合わせでは劣性とされた短い茎の形質は隠され、優性とされた形質がクリスマスローズの茎の長さに現れてきます。
E次にbbbbを交配させてみましょう。
E b b
b bb bb
b bb bb
現れた形は全て茎の短い株(bb)になり、優性の長い茎の形質は逆に隠されてしまいます。
「メンデルの雑種植物の研究」や他の文献による遺伝の法則の理論的なものは上記の形だが、実際にクリスマスローズ ガーデンハイブリットや原種同士の交配においては希望通りにはならず様々な困難がつきまとうようです。たとえばF2のAAbbなら表現の形がすぐにでも理解できるが、Abのように見かけの表現は優性の形をしていても遺伝情報は優性・劣性の双方を併せ持つ場合である。
つまり表現上は優性の形をしているが遺伝情報は優性・劣性双方を持つ場合で、これは人間の目では確認が不可能で模索するしか有りません。
またこの項では茎の長さのみに焦点を当てているが、実際の交配育種はここのように簡単にはいきません。それは一つの遺伝特性がその他多数の遺伝情報によってコントロールされていることによると考えられるからです。
メンデルの遺伝の法則に基づいた表現の仕方は以上の通りだが、実際の育種生産では作られた植物に別の親を交配したり、親となっている植物に戻し交配や選抜をして目的としている表現の植物を作り出していきます。ひとつ注意しなければならなことは同じ両親から生まれた植物でも全く別の顔を表してくることが往々にしてあることで、クリスマスローズは異なった花色を表しているものを掛け合わした場合には思いもかけない表現を見せてくれることがあります。
それはガーデンハイブリットは数多くのバリエーションを表している原種やハイブリットの親を数十世代に渡り交配して作られているため、このような事が多く現れてくるものと考えられます。
クリスマスローズの交配記録・実際的な表現
ここでは実際に行った一つの交配を例にとり述べていきたいと思います。
作られたクリスマスローズの花
上の写真、作られた花の特徴は

外弁は濃い赤紫で内弁に巻き込むように入る
内弁は淡いピンク
ネクタリーは濃い黒紫
スポットは赤
花形は丸弁カップ咲き
花の大きさは中輪

上の画像は外弁が濃い紫、内弁の色がピンク、丸弁のカップ咲きで中輪の花で、7年くらい前に手に入れた下の二つの花を掛け合わせて作られたものです。
交配の目的は丸弁カップ咲きでクリスマスローズの花の特徴を色濃く表し他の植物の花にない個性、スポットを弁の中心にちりばめてみたいと考えたからですが、なをネクタリーが濃い赤紫に現れるよう配慮いたしました。
バイカラーの花 ピンクスポットの花
右の写真はピンクのスポットで丸弁だが二枚の花弁(がく)は剣弁の様相を示している。
左はバイカラーで外弁の色は濃い紫、内弁は淡いクリーム色、丸弁だが不整形。
親になった株は両親とも決して素晴らしい花ではありません。
むしろ両親とも短所の方が多いとも言えるようです。
実際にはどうだったでしょう。
採取した種子は計50粒、播種して発芽した種子は同数、開花させた株は45株、当初の目的に近い花は2株。

WAKAIZUMI-FARM クリスマスローズの新作
クリームイエロー糸ピコティダークネクタリー
白の糸ピコティにつずきクリームイエローの糸ピコティを作出いたしました。
丸弁カップ咲きの黄色の花でネクタリーは赤い黒、花弁の縁にはWAKAIZUMI-FARMのクリスマスローズ独特の繊細な絹糸のような赤い糸ピコティが入ります。
5年前の様子では出来るかどうかの賭のようなものでしたが、昨年暮れより交配株の一部から発現してきています。
まだ一部しか花を咲かせていませんが5年前の白糸ピコティにつずくだろうと育種に
取りかかり、今年になりやっと希望が見えてきたところです。
この黄色のクリスマスローズ糸ピコティ・レッドダークネクタリーの花を皆様のお手元にお届けするにはまだしばらくの時間がかかるかも知れません。現在選別の期間ですので新しい花が咲き次第このページやアルバム・ブログ等でご紹介していきたいと思います。
ご期待ください。
参考文献 
朝倉書店・植物遺伝学
培風館・タマリン遺伝学
岩波文庫・メンデル雑種植物の研究

2006/01
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