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クリスマスローズって何?、何の仲間? ヘレボルスの故郷と歴史

キンポウゲ科 雪割草 ミスミソウ キンポウゲ科 レンゲショウマ

キンポウゲ科アネモネブランタ キンポウゲ科 西洋翁草 セイヨウオキナグサ

キンポウゲ科シュウメイギク

クリスマスローズとは

クリスマスローズは宿根草(多年草)の仲間で、雪割草(ミスミソウ)やレンゲショウマやオキナグサ・オダマキなどと同じキンポウゲ科に属し、植物学上の学名はヘレボルス(h・helleborus  h・hellebores)と呼びます。園芸草花として趣味家に人気のあるクレマチスやアネモネ、毒草として知られているトリカブトなどもキンポウゲ科の植物です。
日本には宿根草・キンポウゲ科の仲間は非常に多く、野山に行けば見ることもでき園芸店などでは大変人気のある大きな群れを作っている植物です。
このクリスマスローズはヨーロッパの西のはずれ、スペインからフランス、イタリア北部の・アルプス山脈を横切りロシアのウクライナ地方・アジアのトルコ・シリア・黒海沿岸に自生している約20種類の原種を数えるヘレボルスの仲間達ですが、ただ一種類他のヘレボルスとは異なりチベタヌスだけが中国の四川省・湖北省を中心に主なヘレボルスの自生地から隔離されて自生し、つい近年までは100年前に採取された標本だけが残されているだけで「幻の花」と言われていました。
ヘレボルスの原種の仲間達の中で1種類、ヴェシカリウスが中東のシリアからトルコにかけての砂漠地帯に自生します。

ヘレボルスの原種 アトロルーベンス ヘレボルスの原種 チベタヌス

クリスマスローズの名称(名前)の由来と歴史

この「クリスマスローズ」の名称は、原産地のヨーロッパなどではヘレボルス属原種の1種類ニゲル(h.niger)をさし、日本のようにヘレボルス属全体をさし示すことはありません。
ニゲルはヨーロッパで花の少ない冬の12月末、クリスマスの頃白い花を咲かせるので、「クリスマスの頃に咲くバラ」という意味で「クリスマスローズ」という、古くからニゲルという本来の名前とは別の愛称をかぶされていますが、このニゲルは「バラ科」の植物ではありません。
日本で最も市場流通が多いと言われているクリスマスローズガーデンハイブリット(オリエンタリス系ハイブリットとも言われている)などは、ヨーロッパなどで気温が暖かくなったキリスト教の四句節(四月・レンテン節)のころに花を咲かせるので「レンテンローズ」といわれています。
日本ではヘレボルス(h・helleborus、h・hellebores)属全体をクリスマスローズと呼んでいますが、本来の学名「Helleborus 」はギリシャ語のHelenin 殺すとbora 食べ物の二つの合成語から発生しています。
これらのヘレボルスはキリスト教と密接な物語が語られる中、その昔ヨーロッパ中世の頃には悪魔や悪霊といった清純な花には似つかわしくない、恐ろしくまがまがしい話しも伝わっています。
ヘレボルスの原種 ニゲルの蕾 クリスマスローズとはこの原種ニゲルです。

ヘレボルスの原種ニゲル ダブル
クリスマスローズの根や茎などにはヘレボリンなどの有毒な成分が含まれているとされ、その草から採った毒性の強い絞り汁を矢の先に塗り鹿や狐などの動物を狩るときに使っ、戦いの時にクリスマスローズの花や葉茎を粉にし敵の陣営にまき散らし自軍を勝利に導こうとしたり、また精神を病んでいる病人に飲ませたり悪魔払いに使ったりと、中世ヨーロッパの暗く隠れた部分を担っていました。
このクリスマスローズニゲルがヨーロッパから日本に伝わってきた時期は意外と古く明治の頃に遡ります。
ヨーロッパから日本に移入された当時は、現在のように観賞用として庭に植えたりして楽しむ植物ではなく薬用植物として移入されていたのですが、下向きに咲く花の風情から茶席に似合う植物とされ原種のニゲルには「初雪おこし」と日本独特の和名を付けられ、その後に移入された無茎種の交雑種ガーデンハイブリットは「寒芍薬」と和名をつけられて、茶人達によって茶席に飾られたりして一般にはあまり知られることなく極一部の人々に密やかながら楽しまれていました。
原種を含めたハイブリットなどヘレボルス属全体の植物を、日本では何時の頃かニゲルの別名「クリスマスローズ」と言う名で呼ぶようになりましたが、欧米ではこの呼び名が完全に区別され無茎種同士の交雑種はレンテンローズまたはガーデンハイブリットと呼ばれ、他の原種や交雑種は付けられた種名・品種名で呼ばれています。
笑い話になるかと思いますがクリスマスローズガーデンハイブリット見たさに、イギリスなどの植物園を訪ねた日本人が、「クリスマスローズを植えてあるところに案内してください」と植物園の人に尋ねたところ、その日本人が見たいガーデンハイブリットのある場所には連れて行かれず、原種ニゲルを植えてある場所に案内されたとの笑えぬような話が伝わっています。
また日本国内での書籍や雑誌などでは、この原種ニゲルを各国の発音で二ガー・ナイガー・ノイガーなどと記述されていますので種名・品種名の混乱を招いています。
最近ではクリスマスローズに関して国内唯一の団体、「日本クリスマスローズ協会」を中心にして、種名・記述名が統一されましたが、マスコミ・雑誌などではクリスマスローズの呼び名や植物に即した名前などは残念ながら今現在統一されてはいません。
影響力のあるマスコミなどで出来る限り早急に種名・品種名の統一がなされると、上記のような混乱が少なくなるかと感じます。
ヨーロッパの国々とは違ってヘレボルス栽培の歴史も浅い日本でも、急速にこの植物が多くの一般植物愛好家にひろまり秋には二年苗が、正月過ぎからは花の咲いている開花株が「クリスマスローズ」の名を付けて多くの園芸店で販売されていています。
これらの現状から、この「クリスマスローズ」の名前は、すでに標準和名として日本では一般的な名称になり定着してきているようです。
国内に関しての限定ですがヘレボルス属の原種・交雑種全体の総称として呼ぶときには、標準和名としての「クリスマスローズ」と、個々の原種やガーデンハイブリット(交雑種)を呼ぶときには、本来の原種名・交雑種につけられた名称で呼ぶようにしたらいかがかななどと考えています。

幻と言われたチベタヌスの再発見

このチベタヌスは120年間、フランス人宣教師のアルマン・ダビッド神父が採集した植物標本だけが残されていて、文明から切り離されチベタヌスが自生する現地の人々のみが知っているだけで、20世紀に入っても誰一人としてその植物が中国四川省の奥地で自生しているのを見たものはいませんでした。
1989年10月に日本のナチュラリスト荻巣樹徳氏が、中国四川省でダビッド神父の残した教会にほど近い場所海抜2000メートルの高地で再発見し、荻巣氏がイギリスでそのチベタヌスの再発見を発表したとき、ピンク色をしたチベタヌスのスライドを見たご婦人が、驚きと興奮のあまり気絶したと言われています。
ヘレボルスの原種チベタヌス

ヘレボルス原種の故郷

ヘレボルスの原種 トルカータス ヘレボルスの原種ムルチフィダス

ヘレボルスの原種 グタータス ヘレボルスの原種トルカータス

ヘレボルスの原種ヴェシカリスス ヘレボルスの原種アトロルーベンス

クリスマスローズ・ヘレボルスの原種には大きく分けて有茎種・無茎種の区別があり、全部で20種類と亜種がヨーロッパ西端スペインからロシアのウクライナ地方・中東シリアやトルコに自生し、特に旧ユーゴスラビアを中心とするバルカン半島にはトルカータス・アトロルーベンスなどの無茎種の原種が数多く見られ、そして主な自生地ヨーロッパから隔離され、チベタヌス一種だけが中国四川省近辺に自生しています。
清楚なイメージのガーデンハイブリットや豪華さを競うダブルフラワーとは異なり、原種の一群は地味ながら素朴さと可憐さに満ちあふれていますが、自生している一部の国々では十分な鑑賞価値を見いだされず輸出品として抜き採られたり、新しい道路などの建設、羊などの放牧のため自生地がしだいに狭められてきています。
無茎種の原種には現代のガーデンハイブリットの基になった原種オリエンタリスの系統、様々な色の基になった原種アトロルーベンス、様々なデザインのバリエーションの基になった原種トルカータスなど、またその他の無茎種や有茎種の原種も色や花の個性を表す遺伝子を数多く作り出しています。
有茎種の仲間には、アーグチフォリウス ・ フェチダス ・ リビダスなどがあり、アーグチフォリウス・ リビダス・ニゲルなどとの交雑種(バラーディアェ・エリックスミシー・ステルニー・ニゲルコルス)などが数多く作り出されています。
最近では原種同士を新たに交雑させた品種も出来ており、イギリス・アシュードナーセリーの育種家ケビン氏がニゲルとチベタヌスを交雑し作出したピンクアイス、ニゲルとヴェシカリウスを交雑したブライヤーローズが注目を集めている。

ヨーロッパを原産地としている主な原種のヘレボルス地図


ヘレボルス・原種ヴェシカリウスの自生地地図(トルコ・シリア)
ヘレボルスの原種ヴェシカリウスの自生地地図

アジアを原産地としているヘレボルス・チベタヌス自生地地図(中国)
アジアを原産地としているヘレボルス・チベタヌス地図
ヘレボルスの無茎種・有茎種の原種・草姿

バルカン半島からヨーロッパ内陸地方に自生している無茎種のヘレボルスは、春に花を咲かせ新しい葉を伸ばし生育し、秋から冬になると葉を枯らせてしまう落葉性の性質を持っています。
それに引き替え、地中海のコルシカ島などを自生地としている暖地性のヘレボルス有茎種の原種は、年月を得るに従い株元から数多くの茎を発生させ、多くの種は春になるとその茎の頂点に花茎を新たに伸ばし花を房状に咲かせます。
花を咲かせた後は夏頃までには花茎は枯れ、春から新たに茎の基から発生してきた茎を夏までに成長成熟させます。

無茎種の原種・主とする自生地名

●H・atrorubens(アトロルーベンス)
旧ユーゴスラビア
●H・croaticus (クロアチカス)
クロアチア
●H・cyclophyllus (シクロフィルス)
アルバニア・ギリシャ・スロベニア
●H・dumetorum (デュメトルメ)
オーストリア・ハンガリー・ブルガリア
●H・multifidus (ムルチフィダス)
旧ユーゴスラビア
●H・odorus (オドルス)
スロベニア・ルーマニア・ブルガリア
●H・orientalis (オリエンタリス)
ロシアコーカサス地方・トルコ
●H・purpurascens (プルプラセンス)
ロシアウクライナ地方・ポーランド
●H・tibetanus (チベタヌス)
中国四川省・湖北省など
●H・torquatus (トルカータス)
旧ユーゴスラビアなど
●H・viridis (ヴィリデス)
ヨーロッパ中部
●H・occidentalis(オキシデンタリス)
ヨーロッパ北部から西部
●H・bocconei(ボッコネイ)
南イタリア
●H・abruzzicus(アブリジクス)
イタリア
●H・liguricus(リグリクス)
北イタリア

有茎種の原種 ・主とする自生地名

●H・argutifolius(アーグチフォリウス・旧名コルシクス)
コルシカ島など地中海の島
●H・foetidus (フェチダス)
ヨーロッパの国々・スペイン・フランス
●H・lividus (リビダス)
マジョルカ島

その他の原種(植物分類学上中間種とも呼ばれる)

●H・versicarius (ヴェシカリウス)
シリア・トルコ国境砂漠地帯
●H・niger (ニゲル)
ヨーロッパ中部・イタリア・ドイツなど
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