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クリスマスローズの育て方・ヘレボルス属の病気と害虫
病害や害虫が発生しにくいと言われているクリスマスローズ(ヘレボルス属)にも、他の植物と同様幾つかのカビ・細菌性の病気や、害虫の食害を原因とする病害などが発生してきます。
クリスマスローズを健康に育てて楽しむためには、病気が発生する前の予防と栽培する植物の生育環境を整理することが最も大切です。病気が伝染する経路の主なものに昆虫の食害、原因となるカビなどの胞子が空気によって散布されたり、病原菌が混じった水によって感染したり、人間の手・衣服、栽培器具の使い回しなどから健康な植物に感染します。
クリスマスローズに限らず多くの植物は新鮮な空気と日光が必要で、クリスマスローズの場合には夏の強烈な日光から植物を守り植物の周囲に新鮮な空気を送り込むことによって、一般家庭でも十分に栽培し楽しむことができます。
ここでは主な病気の症状の写真に解説を添え、病害虫の被害からクリスマスローズを守るための予防と対策を解説しています。
ブラックデス(黒死病)
ブラックデス(黒死病)は、クリスマスローズの新葉が展開する秋10月頃や春から初夏にかけての開花時期に多く現れます。
ブラックデスに罹るとクリスマスローズ、特にガーデンハイブリットの新葉の葉脈や花・茎の脈に沿って
黒いコールタール(光っているような感じ)を筋状に塗ったようになり葉に撚れが生じてきます。
ブラックデスの原因は現在でも不明で、病気の原因となる細菌やカビなどは病害の現れた植物の部分からは発見されていません。ブラックデスの現れた株からはカーラウィルス(Carla virus)が国内外の大学などで発見されていますが病気の原因として確定はされていません。
現在では治療の方法や薬剤は開発されていませんので、ブラックデスが発生した場合には他のクリスマスローズに伝染しないように破棄するか焼却をするようにします。
病気伝染の経路はスリップス(アザミウマ)やアブラムシ(アリマキ)・ハダニなど植物を吸汁する昆虫が、口針で葉や花の汁を吸う時にウィルスを伝播させると考えられますので、栽培しているクリスマスローズの周囲にそれらスリップスなどの害虫を繁殖させる不必要な植物や雑草を生えさせないことと、定期的な殺虫剤の散布、作業をするハサミなど器具の消毒を徹底することが必要です。
特にスリップスは花の花粉を食料としていますので、鉢などに落ちた雄しべなどは落としたままにせずなるべく取り去るようにします。
クリスマスローズと一緒にアブラムシなどが発生しやすいバラなどの植物を同時に栽培している場合には十分な注意が必要です
庭などに植え込んでいるブラックデスに罹ったクリスマスローズは掘り起こして焼却破棄し、その後には数年間はその場所にはクリスマスローズは植え込みません。
ブラックデス対策としてその掘り起こした植穴の周囲には、オルトランやオンコルなどの浸透性移行性殺虫剤を定期的に蒔き、株の周囲の植物に棲息するスリップスなどの害虫を殺虫し、土の中に残った根などが完全に腐敗分解するまでは、クリスマスローズや他の植物を植え込まないようにします。
また、このブラックデスの症状はベト病などの症状と似た様子を示すため、破棄したり焼却する場合にはベト病などを一時的には疑った方が良い場合があります。
ブラックデスはクリスマスローズの病気の中では最も脅威があり、罹病した株に効果のある農薬等は現在はありません。

春に出てきた葉に発生したブラックデス(黒死病)葉から花へと急速に進行してきて花弁にも黒いブラックデスの病変が広まっている

葉全体がブラックデス(黒死病)に犯されてしまったガーデンハイブリット

最も効果的な防除と対策の方法は
1 新しいクリスマスローズを入手した時点で他のクリスマスローズとは隔離栽培する。
2 アブラムシなどが発生しやすいバラなどの植物と同じ場所に置かない。
3 雑草の除去。
4 薬品による定期的な防除。


ブラックデスは新しい葉が伸びてくる頃に発生することが多いため、古い葉との擦れによって起こる茶色い筋と見間違うことも有りますので注意が必要です。

灰色カビ病
クリスマスローズの灰色カビ病は低温多湿の春から夏にかけてと秋の長雨の季節に発生するので、株と株の間の風通しを良くし長雨に当てないようにする。
病原は糸状菌(カビ)の一種ボトリチス菌(Gray mold)などで気温が20度前後で多湿の時期に多く発生する。灰色カビ病に罹る主な環境は、株の間の空気の流通不足・株の深植えや用土の崩れ、根つまり、過湿等が関わってきますのでそれら日常の注意が必要です。
灰色カビ病が発生したなら用土を乾燥気味に管理するが、灰色カビ病に罹らないようにするには秋の11月頃から予防的に殺菌剤を散布し、鉢植えの場合には鉢土の上を清潔にするようにします。
灰色カビ病などの病気に罹ったなら病変部分を切り取り用土を乾き気味にして管理する。
クリスマスローズの花弁から落ちた雄しべの花粉がカビを繁殖させやすい条件を作りますので、花粉は取り去るようにして灰色カビ病などから株を守るようにします。
前年に灰色カビ病に罹ったクリスマスローズの鉢植え株は、その対策方法として表土を数センチ取り去り新しい用土を入れることによって幾分かは防ぐことが出来ます。

移植後の苗に現れた灰色カビ病
発芽苗に入った灰色カビ病  春に発生した新葉に現れた灰色カビ病
立ち枯れ病
立ち枯れ病は灰色カビ病と同じく、土中のカビ(ボトリチス菌・Gray mold)やリゾクトニア菌などによって春から夏・秋の低温多湿の頃に発生することが多いので、株の株の間の風通しを良くし用土を乾燥気味に管理する。鉢植えで立ち枯れ病が発生しやすい環境は、鉢表面の用土が崩れていたり空気が流通していない場合に多く発生しやすい。
鉢植えの株に立ち枯れ病が発生したなら、表土を数センチほど削り取り新しい用土を入れ殺菌剤を用土の中、深さ2センチほど染み込むように散布する。
立ち枯れ病に罹って最悪の場合には葉・茎全てが地際から倒れて腐ってしまいます。
全ての茎が倒れてしまうなどの重症の鉢植えの場合には、早急に雨の当たらない所に移動し殺菌剤を用土の中に流し込みその後数週間はいっさい水を与えずにおきますと、季節や症状の状態にもよりますが新しい芽が数週間後には発生してくることもある。
特にリゾクトニア菌による立ち枯れ症状がみられる場合では、リゾレックスなどのリゾクトニア菌に対する特効薬などの使用に際しては耐性が付きやすいため注意が必要です。
立ち枯れ病が発生してしまったら殺菌剤を散布しての治療が必要ですが、開花株などでは雄しべの花粉などが鉢土に付着し病気を蔓延させないような工夫も必要です。

立ち枯れ病が発生してしまったら
1 鉢を雨の当たらない場所に移動し、新芽が出るまでの数週間は鉢上部からは水を与えない。
2 鉢の表面の用土を削り取り新しい用土を加える。
3 殺菌剤を残された草株全体に散布し用土に流し込む。
4 新芽が出て伸びてきたら水を与え、植え替えの可能な季節なら用土を全て落として新しい用土で植え替える。

カビに犯されて倒れてしまった茎と新芽  
倒れた茎基の拡大写真、軸もとに白いカビが見える茎の軸に白い株が発生している。

苗立ち枯れ病にかかった発芽苗

ブラックスポット(黒点病)
ブラックスポット(黒点病)の症状はクリスマスローズの葉の表面に黒い点々が発生し黒星病ともよばれる。特に高温の季節に多く発生しますので、極端に直射日光が多く当たらないように遮光をし病気予防する。クリスマスローズ(ヘレボルス属)には一般的な病気ですが、ブラックデスやベト病などと病気の症状が似ているためうっかり破棄しないような注意が必要です。
ブラックスポット(黒点病・黒星病)

ベト病
ベト病はクリスマスローズの葉が充実してくる気温20度前後の初夏からから夏にかけての多湿の季節に発生し、初めは茶黒いが症状が進んで来ると銀灰色や黒く乾燥した葉の状態になる。
症状が悪化しないうちに症状の現れた葉を切り取り殺菌剤を散布する。
ベト病の症状の出方によってはブラックデスや黒点病(ブラックスポット)と間違われることがあるので注意する。

ベト病  ベト病の被害葉

モザイク病(バイラス病)
モザイク病はウィルス性の病害で、クリスマスローズの比較的堅くなった葉に多く現れ斑入りと見間違えることがあり、固い葉だけでなく新しく出てきた葉にもモザイクの症状が現れてくる。
ブラックデスとは異なりクリスマスローズの花などには大きな症状は現れないが、時間の経過と共に花にも病変が広まる。
スリップスやアブラムシ(アリマキ)・ダニなどに、これらの病状が現れたクリスマスローズの花や葉を吸汁されないように、健康な株とは異なった場所に隔離するか破棄する。
またモザイク病に罹ったクリスマスローズなどの植物を隔離する場合には、浸透移行性の殺虫剤を鉢や株の周囲に蒔きアブラムシやスリップスなどによってモザイク病の被害が他の株に伝染しないようにする。
モザイク症状  モザイク病の発生したクリスマスローズガーデンハイブリットの葉
クリスマスローズの生理障害・微量栄養素欠乏症
生理障害はカビやウィルスなどによる病気とは異なるが、そのままにしておくと植物の生育に著しい影響が出てくる。
病気の症状は葉脈以外の葉の緑が抜けるように薄黄色に変化するのが特徴で、原因は微量栄養素のマグネシウムなどの不足、過度にカリ肥料(石灰・燻炭)を与えたことによって起きる事が多いが他の原因によっても発生する。
対策は硫酸マグネシウム液を噴霧するか、季節を選び石灰の入っていない用土で植え換えることによって解決する。
植え替えが出来る10月から4月の季節ならば、用土をほとんど落としての植え替えが良い。
また、マグネシウムだけでなく、マンガン・ホウ素・カルシウムなど微量栄養素の過不足などによって生理障害が起きる場合があり、写真画像とは異なった様々な症状を現してきます。
応急的には住化タケダ園芸で発売しているエードビタスプレーが微量栄養素欠乏症には効果があります。

この微量栄養素欠乏症の写真は一例で、このほかの症状も多くありますので注意が必要です。
微量栄養素欠乏症の苗  微量栄養素欠乏の葉

微量栄養素欠乏症のクリスマスローズ(葉の黄変)
黒斑細菌病
黒斑細菌病は、ごく最近になって東北地方で確認されたクリスマスローズの新しい病気である。
葉の周囲が枯れたように濃い茶色になり、その周辺が黄色く彩られるようになるのが特徴。
初夏からの高温多湿の条件下での発生が多く、予防には十分な空気の流通が必要で写真のような症状が葉に現れたら、その部分をハサミなどで切り取り他の株に移らないようにする。

黒斑細菌病

殺虫剤・殺菌剤の薬害
下の写真は白のガーデンハイブリットに現れた殺菌剤による薬害の一部です。
このような薬害は、開花の間際になり灰色カビ病や立ち枯れ病の害から苗や株を守ろうとする際に殺菌剤・殺虫剤を散布し発生させてしまいます。
クリスマスローズに薬剤を散布する場合には予防的に蕾が大きくなる前に散布したりし、蕾が大きくなっているものや開花している株は薬剤を花などにはかけないように注意し、茎の際や用土に染み込むよう散布するようにします。また植物に農薬などの薬害を発生させてしまうのは、濃度を調整する際の農薬や水の量を間違えた時や、高温の季節に散布し急激に乾燥した場合などの時にも発生させてしまいますので、気象条件や薬剤の濃度には十分に注意したいものです。

殺菌剤による薬害症状  
殺菌剤によって起こった薬害症状

殺虫剤による薬害殺虫剤の散布によりクリスマスローズの葉に発生した薬害の一部。

クリスマスローズの種さやに現れた薬害
軟腐病
白菜などの野菜に多く発生する病気で、夏から秋にかけてクリスマスローズに発生することが多い。症状は茎の基が白くホコリにまみれ濡れたようになり茎が抜け倒れてくる。
白くなった部分からは独特の腐敗臭が発生するので、他のクリスマスローズの病気とは容易に判別できる。台風の強風などによって葉や茎が折られ、その部分から病気の原因となる菌が進入する事が多い。
またこの軟腐病は葉や茎などの傷口からだけでなく病原菌の混じった水などからも罹患することが多い。最小限の軟腐病対策としてクリスマスローズや他の植物を植え込んでいる鉢などの底や根は直接地面などに触れないようにして予防する。
罹患した株の根本的な病気の治療は不可能であくまで薬剤は予防的に使用する。
軟腐病が予想されるときにはキノンドー等の予防薬を事前に散布するようにします。
マイシン剤は病原菌に耐性が発生する場合が多いので、最低限の使用とし数多く使用しないように注意する。
クリスマスローズ・オーストラリア系ダブルの病害 炭疽病
葉の表面が上にまくり上げられ周囲が壊疽状になった葉  葉の縁に黄色いシミが現れ、その中心近くに茶色や黒い壊疽症状が現れる
オーストラリア系のクリスマスローズダブルやセミダブルの系統の株に、時たま現れる病害症状です。
秋や春に新しく発生してくる葉が葉の表面に巻き込むようになり、葉の縁が黄色くリング状に彩られたり、あるいは焦げ茶色に変色してくる症状です。
この症状はオーストラリア系のダブルやセミダブルに多く現れているもので、国内で採取して実生した株や他の地域から導入されたクリスマスローズハイブリットには見られません。
葉の出てくる頃に殺菌剤を数回散布しますと、新しい葉は正常な葉になることもあります。
このような症状を現した株からはダブルの花が多く現れるとか、またこの花粉を使用した交配株からはダブルの花が多く現れるとか言われているようですが、その因果関係は確認されておりません。
これらのクリスマスローズに発生した症状の株からは、幾つかの農業試験場にて多犯性の炭疽病菌(コレトトリカムデマテューム・Colletotrichum dematium)が発見されています。
殺菌剤を散布され正常な葉に戻ったクリスマスローズの株  殺菌剤を散布され正常な葉に戻ったクリスマスローズの株
クリスマスローズガーデンハイブリットの雄しべに発生したカビ
雄しべに発生したカビ(灰色)  雄しべに発生したカビ
カビにより花粉を灰色や茶褐色に変色させたクリスマスローズの花。
蕾が大きくなる頃ボトリチス菌などのカビが蕾に進入して開花した花の花粉部分の色が灰色になる。

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